[附巻0003]【二十一年、毛鳳朝、王に扈従して薩州に至り、屡々聖慮を慰む。】薩州大将椛山氏等、勇士三千余人を率領し、兵船七十余隻に坐駕して運天津に至る。時に、毛鳳朝(読谷山親方盛韶)は、御鎖側官を署理す。即ち菊隠長老等と同に、往きて運天に至り、以て講和せんとす。大将曰く、船那覇に到りて相与に商量せんと。鳳朝等首里に回り到り復命す。未だ幾日を閲せざるに、船那覇に至る。鳳朝亦其の船に至り、以て和睦せんとするも、未だ允依を見ず。遂に以て、聖上、投誠納款す。時に法司官、謝名・浦添は、罪を薩州に獲て即ちエ掠せらる。鳳朝、紫冠を頂戴して三司官を護理し、聖主に扈従し、赴きて薩州に到らんとす。時に、聖駕暫く那覇に駐まる。即ち鳳朝等に謂ひて曰く、予、窃に之れを聞く、積善の家に余慶有り、積不善の家に余殃有りと。今や余慶既に尽き、余殃朕が身に切まる。遽に故国を出でて、遙に滄溟に航し、以て扶桑に赴かんとす。嘗て夢にも見ざるのみ。鳴呼此を去りて彼に至る。此の躬何人に托せんや。亦汝等千山を経歴し、万波を破凌して、身を仙境に終へんやと。鳳朝及び従臣等、伏して綸語を聆き、泣涙雨の如し。鳳朝跪き奏して曰く、鳥獣すら報ゆることを知る、況んや人に於てをや。臣等素より爵禄を蒙り、深く隆恩に沐す。上は父母を養ひ下は妻子を撫すること、皆深仁厚沢に出づるに非ざるもの無し。伏して冀ふ、聖躬に随従して他境に赴き到り、必ずや身命を顧みず、将に忠忱を尽くして以て微躯を終ふべしと。王悦びて曰く、良い哉汝等の言やと。国人之れを聞きて忠義を興発せざる者莫し。後亦那覇を開船し薩州に赴く。時に惟新公、鳳朝を召見して腰刀を恩賜す。辛亥の秋に至り、聖主に跟随して、平安に帰国す。