[附巻0041]【二十年、駿馬を薩州光久公に献上す。】姑米山に名馬(俗に叫びて仲黒馬と曰ふ)有り。薩州太守光久公、之れを聞き、鎮守官阿多氏に令して、斯の馬を求めしむ。鎮守官以て法司に達し、姑米山より、仲黒馬を以て中山に渡来せしむ。斯の馬を看相するに、蹄齧跼跳して、人騎する能はず。独り武魁春(野国親雲上宗保)有り。善く馬に騎し、善く馬を馴す。法司、武魁春をして、此の馬を騎馴せしむ。已に三旬を経て、索無くして馳せず、羈無くして則ち治まる。恒に武魁春に随ひて、以て走停を為すこと、狗犬の猶主人に従ふがごとし。是れに由りて、法司、武魁春をして斯の馬を護運せしめ、薩州に到りて光久公に献上す。光久公、角楼に坐御し、薩州の主掌馬官に令して、斯の馬に騎せしめんとするに、蹄齧跼跳して馭騎する能はず。光久公、武魁春に令して、斯の馬を試せしむ。武魁春、鞭を取り馬に騎して、敢へて畏憚せず。鞭を打ち、駛馳走すること飛ぶが如し。光久公、諭して曰く、汝騎馬に功有り。妙を得ると謂ふべしと。遂に褒賞を蒙りて帰国す。