[附巻0089]【三十六年、翁長村の津花波、褒を蒙り、地頭職を其の子に襲がしむ。】西原間切翁長村に、津花波親雲上なる者有り。幼、孤にして貧、長ずるに及び、則ち母の鞠育に感じて、勤倹、富裕を致し、豊かに母を養ふ。又才能有りて、曾て具志頭按司の儀者と為りて薩州に到る。帰国して其の大親役と為り、神田村夫地頭職に任ず。後、宮平按司加那志大親役と為り、座敷位に陞る。役を辞するの後、転じて津花波村夫地頭職に任ず。此の村は、民疲れ、多く貢賦を欠く。則ち資を以て民に借し、以て其の欠を補ふ。其の償を収むるに至りても、年の豊歉を酌みて、漸く之れを収め、其の利息を免ず。又、佳節に資を費すの時、本郷隣里の貧民、其の肋を受けざる者無し。死するに及び、公朝、賞して其の地頭職を以て其の子に襲がしむ。