[附巻0091]【附読谷山郡比謝村の儀間、右京の号を得。】読谷山郡比謝村に、儀間なる者有り。膂力甚だ大、驍勇絶倫なり。曾て馬を牧に守る。時に在番使川上右京、其の郡に往きて野猪を猟射す。時に一大野猪有り。箭と刃とを受け、威を振ひ、奮怒して猛然として飛び来る。儀間、空手にて擒住す。旁観する者、皆以て嘆賛す。又、川上、牧に入りて馬を看る。只一牡馬有り。碩大にして高昂、蹄噛跼跳、人に向ひて来る。人皆驚き散ず。川上氏、之れを指して曰く、真に駿馬なり。以てツき来るべし。而して我に看るを与せと。儀間、往きて之れに近づくに、牡馬愈々怒気を奮ひ、蹄噛已に極まる。儀間相戦ふこと一刻余計り、リ上して其の馬を握住し、拉して川上の前に至る。川上、其の膂力の絶世なるを褒賞し、竟に右京の号を賜ふ。此れよりの後、筑登之に陞り、歴て黄冠に至る。是れに由りて、之れを称して曰く、右京筑登之親雲上と。