[附巻0174]【本年、使を薩州に遣はすの挙を停止す。】本国は曾て、亜墨利加・仏朗西両国と約を立てて好を結ぶ。今、阿蘭陀国人甲比丹有り。長崎地方に在りて其の由を聞知し、該両国の例に照して約を立て好を結ぶを請ふ。宜しく該国使臣の到来を俟ち、亜墨利加国の例に体照して、立約結好すべし。其の時、薩州の員役も亦該使臣と面会せしめて可なるべし等の因、薩州より牌を備へて移し来る。但、薩州の員役、該使臣と面会すれば、則ち大いに妨ぐる所有るに因り、経に国主の命を請ひ、将に使を遣はして懇乞して、其の面会を弭めんとす。時に山田壮左衛門殿有りて、阿蘭陀人に支給するの文書を抄写して、琉館に移行し、転報して前み来る。其の文書を閲するに、只本国官員相会の意有りて、薩州員役面会の意無し。且該田、別に移文して云ふ、約条一案は、応に来春に于て、監守官に着令し、転飭知照すべし。更に御用人をして親しく本国に抵りて当面告暁せしむ。若し其の内に、特に使者を遣さば、合はざること有るを恐ると。遵ひて即ち使を薩州に遣はすの挙を停止す。