[附巻0237]【本年、内地馬艦船一隻有り。多良間島より貢米を装載して、風に任せて漂蕩す。】此の年、該船隻、早く風を候ちて開洋せんとす。偶々颶風に逢ひ、大洋に飄蕩し、針路方を失ひ、風に任せて漂流し、正に万死一生の際に在り。幸に、火輸船二十五隻の連して駕過するに逢ふ。其の内の火船一隻、前に向ひて馳せ来り、難船を維留す。時に船筆者宮城有り。一人夷船に飛び上る。該夷人水を給し渇を允し、更に来歴を訪ふ。該城、手を用ひて様を為す。随ひて即ち夷人等、清水・白米・菓子等の項を支給す。既にして船隻を引導するを禀請す。該夷人、杉板両隻を卸下し引きて上海に到る。随ひて即ち夷人一人、該城を率同し、前みて在華東京官員の処所に到り之れが着落を為す。茲に該城、本国船隻の中華に漂到するの時、例として福州に送到して、以て帰国するを得るを蒙るを将て、例に照して解送するを准すを乞ふの由、再に至り三に至り、京官に禀請す。乃ち琉球は、今東京の属内と為り、行ふ所の事情、前日に同じからざるの処を将て、請ふ所を准さず。且飭するに、其の船隻、地に就きて発売するは如何の処を以てす。其の令に凛遵するを除くの外、深く撫恤を蒙り、着令して蒸気船に搭駕し、先づ長崎に送り、後薩州に運び、以て帰国するを得たり。