[附巻0239]【本年、英国官員、謝恩の事の為に、政府の命を奉じ、礼物を捧来して国主に奉贈す。】此の年、英国蒸気船一隻の泊村洋面に収到する有り。随ひて即ち、摂政・法司・度支・御鎖側等の官各一名及び員役等、前みて泊村に赴き、之れが料理を為す。小管直達殿・内地通事係等に至りては、該英船に赴き、其の来国の事情を将て、細さに英人に問ふ。称に拠れば、客歳、本国の船隻、貴国洋面に在りて、礁を衝きて損破し、人将に溺死せんとす。幸に撈救して活命するを蒙る。茲に謝恩の事の為に、政府の命を奉じ、金時計・金鎖等の項を捧帯し、軍艦に坐駕して上海開洋し、貴国に贈来す。計るに其の人数は共に八十名なり等の語、此れに拠る。其の内英人二名以及び上海留る所の倭人六等書記生和田雄次郎殿等は、転じて那覇に到り、陸より起程し、前みて苡和使監守館舎に赴く。歩して半路に到り、偶々在国の福崎季連殿に逢ひ、相共に転じて親見世に到り、即ち前みて城裡に赴き当面王に見え、政府贈る所の礼物を奉献せん等の由を具して、朝廷に禀明す。当即に言を国主の染病に托して、固く推辞を行ふ。該r人等再び城裡に進到し、摂政・法司等の官に拝見して、其の礼物を将て、摂政に支給し転じて国主に献ぜん等の由を具し、業に禀明を経たり。此の時に当り、言の托すべき無く其の禀する所を准す。英人翻訳官壁利南・艦長卓芝、同伴三名、水主三名・倭人雄次郎殿・直達殿二名を宰領して、城裡に進到す。摂政等の官、座を西殿に設けて、該英人を待す。称に拠れば、去年、本国商船、貴国洋面に在りて、礁を衝きて打砕し、人将に溺死せんとす。幸に撈救して活命するを蒙る。茲に謝恩の事の為に、政府の命を奉じ、礼物を捧帯して国主に贈来す。宜しく応に具疏して奏聞すべし等の語、此れに拠る。摂政収めて王に献じ、命を奉じて答謝す。事訖りて、季連殿及び摂政・法司等の官、該英人に陪して、待するに茶菓・点心・酒等の項を以てし、其の水主に至りては、別処に邀搬し、待するに茶菓を以てす。英人、礼物を受収するの甘結を交給するの処を将て、又復由を具して禀明す。随ひて即ち、摂政等の官、季連殿と相共に商議し、禀に依りて批准す。且朝廷、供食の事の為に、豚・羊・鶏・芋・w蛋・蔬菜等の項を将て英人に発給して曰く、此れ那覇官の贈る所の物件に係ると。英人収めて答謝す。又摂政等の官、英人に謂ひて曰く、宮古島吏役の報称に拠れば、今般、喜耶阿麻根国の商船有りて、本島洋面に漂到し、礁を衝きて損破し、人皆上岸して活命す等の語国に到り、此れに拠る。今顧ふに、難人島に在ること有りや否や、未だ其の由を知らず等語と。禀に拠れば、我等回国の時、必ず須く該島に転到し該難人を将て本船に搭駕して、一同帯回すべし。乞ふ、水梢二名を雇募して、本船に搭駕して之れが引導を為すを准せ等の情、此れに拠る。朝廷其の請ふ所を准し、其れをして二名を宰領し、開洋して島に赴かしむ。