[附巻0265]【本年、太平山の貢米を載運する船隻、洋中颶に遇ひ、風に任せて漂流する有り。幸に異国船隻に逢ひて、之れが引導を為し方めて回国するを得たり。】此の年、大里郡与那原村に居住するの津嘉山里之子の十二端馬艦船、太平山に在りて貢米を装載し、返棹の時、洋中颶に逢ひ、其の艱難を極む。貨物を白「し、帆檣楫を損破して風に随ひ漂流す。幸に異国の風帆船隻の駕過するに逢ふ。即ち該難人等、用水を送給するの処を将て、手を以て様を為す。随ひて即ち該夷人等、杉板一隻を遣撥して船辺にj来す。其の一人上船して用水を送給するの外、遍く舳艫を看て回る。即刻該夷人、繩子を帯び来り、其の船に索繋して、之れが引導を為し同に上海に到る。当即に日本領事官に報明して之れが掌管を為さしむ。随ひて糧菜を恵給するを蒙るの外、衣裳各一領・金各二円を派給す。既にして着令して、其の船隻曁び贏貨を将て本官に移交して之れが料理を為し、郵便高砂丸船に搭駕す。遵ひて即ち難人等、該地開洋し、長崎内港に鴛到して、県庁に報明す。随ひて之れが照料を為し、館を給し、食を給するを蒙り、三邦丸船隻に搭駕せしむ。遵ひて即ち該地開洋し、前浜洋面に駛到す。其の後、或いは飛船に駕し、或いは楷船に駕して、以て回国するを得たり。