[附巻0269]【本年、外国蒸気船一隻、本部郡瀬底村の洋面に漂到する有り等の由、該郡夜番、由を備へて報じ来る。】此の年、外国蒸汽船一隻、本部郡瀬底村の洋面に漂到する有り等の由、該郡夜番報じ来る。随ひて即ち国に留まるの倭宮と、確に商議を加へ、通事係曁び員役等を遣撥して、諸事を弁理せしむ。且該船抛碇の後、夷人四名、倭人一名を率同して上岸し駅に到る。倭人をして代りて転禀を為しめ、活牛一口・活鶏十九隻・鶏蛋四十個・草藁各五束を送給す。即ち価を収めて交給す。且該倭人に向ひて、其の来歴を問ふに即ち云ふ、夷人一百二十名・倭人二名、倭国開船し、洋中颶に逢ひ此の地に漂到す。該夷人等風日を看察し、覇港に運到して、我等二名を以て那覇に卸留し、前みて中華に赴かんとす等の語、該部員役等、由を備へて報じ来る。又該通事係、前みて彼の船に赴き、其の来歴を問ふに、即ち云ふ、此れ魯西亜国の官船なり。先に赴きて東京に到り、後、大坂・麑島等の県に湾泊し、香港に到らんとす。奈んせん洋中颶に逢ひ、此の地に漂到す。其の順風有るを俟ち、覇港に駕到し、然る後前みて香港に到らん等語と。且該夷人の禀請有るに因り、球人一名をして夷船に坐駕し、導きて覇港に到らしむ。随ひて即ち御鎖官・度支・吟味官各一員、前みて那覇に赴き、通事係を遣去して、其の来歴を問ふに、即ち云ふ、諸国を巡看する事の為に、此の地に収到す等語と。其の余は前言に異ならず。且国に在留するの朝官等暁して云ふ、本官等、該夷人と相接するの時、夷人等、活牛一口・活鶏一十八隻・鶏蛋四百三十個・塩六斗を送給するを禀請す。宜しく応に送給すべし等由と。随ひて数に照して、該夷人等に送給せしむ。其の駕す所の倭人・球人を将て、那覇に卸留し、開船して回去す。