[附巻0275]【本年、外国船一隻、兼城郡糸満村の洋面に飄来し、礁に登衝して損壊する有り。】此の年、外国船一隻、兼城郡糸満村の洋面に飄来し、礁上に衝登す。随ひて即ち、朝廷、其の情由を具して、内務省出張所に報明するの外、員役を該村に遣去し、之れが照料を為す。而して、青木孝亮殿・時任義当殿等に至りても、亦前みて該村に赴き、通事係を遣去して、細さに其の来歴を問ふ、即ち云ふ、此れrqル国商船に係る。通船の人数共に十九人、内に中国人三名有り。呂宋国に在りて、風を窺ひて開駕し、亜米理国加良扶根島に赴かんとし、洋中風雨に遇着し、貴国に飄来して、礁上に衝登す等語と。是れに由りて問ひて云ふ、舟を示して挽き卸すこと、之れを如何ぞや、且柴水曁び応用の物件、黷オ用ひ尽くすこと有らぱ、宜しく逐一乞求すべしと。乃ち云ふ、帯ぶる所の物件は、尚不足無し。而して舟を撥して挽き卸すの一案に至りても亦暫く停止を行はむ等語と。又該船の久しく軽くは浮かざるを見て、船上の人等、皆懼恐の心有り。隨ひて即ち、再び通事係を遣はし、再三商議して云ふ、覇港に停泊する蒸気船を運来して、其れをして、此の船を挽卸せしむれば、之れを如何ぞや。抑且、一切の貨物は、小舟に載移し、船をして軽く浮かしむれば之れを如何ぞやと。乃ち覆して云ふ、潮水已に満ち、風、子丑に転ずれば、自ら応に艇身浮き出すべし。煩擾を致す莫し等語と。又該外国人等、艇身保し難きの由を報明す。随ひて即ち小舟数隻を遣撥し、貨物を載移し、通船人等、杉板に坐駕して、一同上岸す。即ち糸満村の公署に卒去し、qを備へて款待す。該船潮水満溢して損壊に就く。又外国人等、日本官員に接瞻するを禀請する有り。随ひて即ち、河原田盛美殿・青木孝亮殿等、対面相接す。即ち云ふ、乞ふ、難民等を将て、覇港に湾泊するの蒸気船に搭駕して、日本に護送せよ等語と。即ち覆して云ふ、詳の如く料理せんと。即ち難民及び貨物等を将て、杉板に駕載し、那覇に移運して、臨海寺に安頓す。既にして該難民及び貨物を将て、迎陽丸船に搭駕して、長崎県に護送す。