[附巻0276]【本年、外国火輪船一隻有りて、八重山島西表郡舟浮村の洋面に来到す。】此の年、外国火輪船一隻、八重山西表郡舟浮村の洋面に来到す。而して其の船隻は、上原村の北面より走過して来る。即便に該船人六名、杉板に坐駕して其の港にj来す。潮を謀り水を計りて本船に回去す。且杉板三隻をj出し、毎隻六名を坐駕せしめ、本成屋の浜に来到して、一共に上岸す。其の附近の山野に侵入して、小松三本及び高久葉五本を伐採して、其の浜に在りて柵垣を結造し、之れを塗るに白灰を以てし、之れに画くに黒的を以てす。更に其の浜の近辺に在りて、潮を謀り水を計りて本船に回去す。即刻、鉄砲を該柵に放発すること共に二十二次に及ぶ。且復、杉板三隻を発出し、毎隻六人を坐駕せしめ、南方津口より以て越良江口に至るまで、其の潮水を計りて、本船に回去す。且日本人一名、外国人六名共に杉板に駕し、犬二口を率同して舟浮村の浜にj来し、一共に上岸す。而して日本人問ひて云ふ、此れ什ラ地方と叫ぶか、山猫・蛇・鴨・牛馬有りや否やと。答へて云ふ、地名は舟浮村、只、山猫・蛇・鴨・牛有りて並びに馬有ること無し等語と。随ひて即ち、日本人及び外国人四名、本船に回去して、其の余二人は犬二口を率同して、行きて舟浮村近附の山野に去る。歴ること久しきも回らず。其の村の土民人等、正に往来を護守するの際に在り。然れども他事有る無し。鴨鷺を射得て、該浜に回去す。随ひて即ち杉板一隻を爬来し、該二名を坐駕せしめて以て本船に回り、開洋して回去す。