[附巻0279]【本年、去年、伊江島の他船、黒糖を装載して那覇に来到し、事竣りて回島の時、外島各処に飄到し、麑島に転到して以て回国するを得たり。】此の年、伊江島の地船、黒糖を装載して、那覇に来到し、人民四各、船に駕し回島の時、洋中俄に風雨大いに作るに逢ひ、風に随ひて漂流し、其の艱難を極む。有る所の米・水は底を徹して吃ひ尽くし、舵工一名は、饑餓して死す。其の三名も亦万死一生の際に在り。幸に添番地方に飄到す。即ち其の地の人民、飯を給して恤養するの外、阿留般地方に送到す。該地開洋し、麻武根伊良地方に護送し、該地開船して、香港地方に送到す。即ち、該地に駐箚する日本官員、飯を給して撫養するの外、更に毎人、洋銀各一円・衣裳各一領・帯子各一条を派給するを蒙る。麑島県平民宮田甚助に着令して、之れが引導を為し、上海に護送して、在海の日本領事官に報明す。随ひて、該官、糧食を優給するを蒙り、該甚助と一同、郵便船玄海丸船隻に搭駕して、長崎に護送し、県庁に報明す。随ひて、該庁、厚く保養を行ふの外、之れが料理を為すを蒙り、該宮田に着令して、麑島に護送せしむ。是れに由りて小舟に坐駕して麑島前浜に送到し、麑島丸船隻に転駕して、以て本籍に回るを得たり。