[本文0006]【往古の俗習今と大いに異なる。】男女皆白紵を以て髪を纏ひ、頂後より盤繞して額に至る。男人は烏羽を用ひて冠を為り、装ふに珠貝を以てし、飾るに赤毛を以てす。形製同じからず。婦人は墨を以て手に黥し、文を為す。羅紋の白布を以て帽を為る。其の形、正方なり。皆樹皮并びに雑色の紵及び雑毛を織り、以て衣を為る。製裁一ならず。毛を綴り螺を垂れて飾と為し、雑色相間り、下に小貝を垂る。其の声、珮の如し。鐺を綴り、釧を施し、珠を頸に懸く。又藤を織りて笠を為り、飾るに毛羽を以てす。猟漁者の家は、必ず獣頭を門戸上に安んず。俗、山海の神に事へ、祭るに酒肴を以てす。或いは石を累ね、幡を繋けて神主と為す。嫁娶には酒肴珠貝を以て聘と為す。或いは男女相悦すれば、便ち匹偶と為る。婦人、産後は火を以て自ら灸り、汗を出でしむること数日にして、便ち平復す。凡そ宴会有れば、止一盞を以て輪流して之れを飲み、共飲して頗る酔ふ。一人唱して衆皆和す。音頗る哀怨なり。或いは女子をして手を揺かして舞はしむ。偶々異味を得れば、先づ尊者に進め、然る後、少者之れを食す。其の病死者、気、将に絶せんとすれば、挙げて庭に至る。気絶すれば則ち親族哭泣して相弔ふ。後、其の屍を浴して、腐を去り骨を収め、布を以て之れを纏ひ、裏むに葦席を以てし、親土して殯し、上、墳を起さず。子、父者の為に、数月肉を食せず。国に賦斂無く、事有れば則ち均しく税す。厥の田は良沃なり。先づ火を以て焼き、而して水を引きて之れに灌ぐ。其の農器は、石を以て刃を為る。長さ尺余、濶さ数寸。而して之れを墾す。土宜は、稲・梁・禾・黍・麻豆・赤豆・胡豆・黒豆等なり。尤も猪・鶏多し。王、居る所の舎は禽獣を鼾盾キ。乗る所のqは、制、獣形を為し、左右をして之れをtせしめて行く。按司乗る所も亦獣形を為すも、其の制稍異なる。君臣上下の節・拝伏の礼、之れ有りて亡きが如し。俗、文字無し。国人攻戦を好む。人皆驍健なり。郡に按司有り、村に酋長有り。皆善戦者を以て之れと為し、而して民間の事を理めしむ。兵器に刀・弓箭・剣≠フ属有り。国貧にして鉄少く、刃は皆薄小なり。多く骨角を以て之れを輔く(我が国、笂Sの属を産せず。何を以て兵器有るを得んや。疑ふらくは是れ当時他国と相通ずる者有りしならりんや)。紵を編みて甲を為る。或いは皮を用ひて之れを為る。間々乱逆者有りて悪を為せば、則ち兵を率ゐて之れを殺す。或いは殺す所の人を将て其の神を祭り、或いは髑髏を樹上に懸け、箭を以て之れを射る。其の甚だしき者は、共に聚りて之れを食ふ。仍、髑髏を以て功を王に奏す。王は則ち功を計りて冠を賜ふ。其の功多き者は隊師と為らしむ。又刑を用ふるに律の准ずる無く、皆事に臨みて科決す。其の獄訟も亦皆酋長に断ず。伏せざれば則ち王に上請す。王、群臣をして共に之れを議定せしむ。獄、枷エ無し。唯繩縛を用ふるのみ。軽罪は杖を用ひ、死刑と決すれば則ち鉄錐の大きさ筋の如く、長さ尺余にて其の頂を鑽して之れを殺す。其の俗習の大概此くの如し。