[本文0008]【汎く国と相通じ以て貿易を致す。】隋氏既に亡び、唐を歴て宋に至るも、未だ嘗て中華に入貢せず。惟能く本国の船隻、諸国に往還し、兌換貿易して、以て国用に備ふるのみ。此の時、航海往来する者有れば、必ず憲令を奉じて後海洋を過るならん。厥の後に至り、皆兵乱に因りて私窃に海を過る者甚だ衆し。故に宋史流求伝に云ふ、淳煕年間流求、常に数百輩を率ゐ、猝りに泉州の水澳頭等の村に至り、肆に殺掠を行ふと爾云ふ。是れに由りて之れを考ふるに、天孫氏裔流の末、諸国に通じて往来交易すれば、則ち亦文字を用ひしこと也知るべし。然れども記籍湮没して今存する有る者鮮し。深く惜しむ可きかな。