[本文0062]【暹羅船国に至る。】暹羅国の船隻国に抵りて交易す。帰帆の時に当り、風に遭ひ漂ひて福建に抵る。布政司命を請ふ。成祖、礼部尚書李至剛に諭して曰く、暹羅と琉球とは通好す。自ら是れ番邦の美事なり。豈其の危に乗じて之れを利すべけんや。郷に善人有れば猶能く困を済ふ。況んや朝廷天下を統御するをや。舟若し壊るれば、之れが為に修理し、人食に乏しければ、之れに米粟を給せよ。或いは国に帰り、或いは琉球に往くも、風便を俟ちて之れを導き去らしめよと。