[本文0117]【呉弘肇の妻、水を王に献じて以て褒嘉を蒙る。】尚徳王親ら軍兵を率ゐて鬼界島を征討し、凱旋す。而して聖舟、泊港に至るや、諸臣及び男女、聖主を出で迎ふ。独り呉弘肇(泊里主宗重)の妻のみ親しく自ら水を戴き、海涯に迎へて以て王に献ず。王問ひて曰く、汝は何人の妻なるか、何の為に水を汲みて来るやと。対へて曰く、妾は是れ呉弘肇の妻なり。窃かに聞く、聖舟凱旋すと。津中日久しく水も亦r濁すること有るを恐る。故に妾は此の清水を戴き、之れを王に進めて以て王の手足を洗はんと。是に於て王、大いに悦びて曰く、乃ち是れ女中の忠臣なりと。王、其の水を用ひ、手足を洗濯して之れを清潔にす。遂に王、弘肇夫婦を召して宴を賜ふ。即ち夫は封じて泊地頭と為し、妻は封じて泊大阿母潮花司と為す。而して之れに田圃(高四石二斗八合六勺六才)を浦添間切名嘉瑠邑に賜ふ(泊地頭と泊大阿母とは此れよりして始まる)。