[本文0163]【久米島の君南風、官軍に跟随して八重山に往き至り、奇謀を設け為して深く褒嘉を蒙る。】太古の世、久米山に姉妹三人有り。長女は首里辨嶽に栖居し、次女は久米山東嶽に栖居し、後、八重山に至りて宇本嶽に栖居す。三女は久米山西嶽に栖居し、君南風職に任ず。是の年に至り、中山、八重山を征伐す。時に、首里神有りて曰く、八重山の神と久米山の神とは、原、是れ姉妹なり。若し君南風、官軍に跟随し往きて八重山に赴き、諭を以て暁すを為せば、必ずや以て信服せんと。君南風、命に遵ひ、軍に従ひて行き、已に八重山に至る。賊衆甚だ夥く、防備已に密にして以て上岸し難し。君南風、即ち奇謀有り。竹筏を作り為し、上に竹木を装ひ、焼きて姻火を連ね、以て放流せしむ。賊衆之れを見て皆兵の逝く所の処に行き、将に以て防戦せんとす。官軍時に乗じて上岸し、相戦ひ相殺す。此の時、宇本嶽君真物神有り。来りて君南風と会し、早已に信服す。賊衆其の神の帰服するを視、大いに驚き且服す。是れに由りて大将軍招撫恤綏して人民始めて安し。既にして功を成して凱旋し、細さに他の奇謀を疏して聖聴に上達し、深く以て褒嘉す。其の子孫の家、世々君南風職に任じ、而して彼の肥良志屋の地を拝授す。