[本文0181]【宮古山の鯖祖氏玄雅宝剣を献上す。】平良の北、務田川、夜半に至る毎に、音響地を揺がし、光輝天に沖して人民畏懼す。鯖祖氏豊見親玄雅、彼の地に往き去くに、音弭み光滅して一物有ること無し。曙天に至るを俟ち満処に巡到し、心を用ひて之れを見るに、只一剣有るのみ。豊見親、大いに之れを奇怪とし、此の剣を収獲して回る。此れよりの後、祥光門をめ、瑞色戸を繞りて一点の災殃有ること無し。豊見親、深く之れを珍重し、以て伝家の宝と為す。後日に至り、深く此の宝剣の凡人庸民の得て宝とすべからざるを念ひ、嘉靖壬午、豊見親、朝覲入貢するの時、此の宝剣を捧げて中山に至り、聖主に奉献す。公務全く竣りて島に帰るの時、ユに逆風に逢ひて八重山に漂到し、vを多武田礁に破り、人皆溺死を致す。豊見親、浮びて海面に在るのとき、忽ち一大鯖来り、豊見親を負ひて海浜に至る。豊見親、以て上岸に便す。即ち水梢をレひ小舟に坐駕して本島に帰回す。翌年の夏、亦中山に入覲し、恭しく金銀簪二(金鳳銀茎一・獅銀茎一)・白絹衣裳を賜はりて帰島す。