[本文0191]【佐司笠按司加那志、始めて清泉を掘る。】茗苅子、嗣子有ること無し、即ち其の家宅並びに請地を以て、外孫佐司笠按司加那志に給与す。佐司笠按司加那志は、乃ち真王の女にして尚魏鼎(見里王子朝易)の妃なり。尚真王、彼の第宅に新に室堂を構え、尚魏鼎の妃に賜ふ。其の宅の東南隅に大キ樹有り。常に白鷺の其の樹上に投宿する有り。佐司笠按司加那志、之れを見て曰く、白は金に属し、金は水を生ず。今、白鷺の此の樹に投宿するを見れば、必ずや彼のキ樹下、清泉有りて湧出せんやと。是れに由りて樹下を掘り開くに、果して清泉を得たり。叫びて佐司笠泉と名づく。伝へて裔孫向佐国(越来親方朝但)に至る。天、已に大旱し、田野乾涸して草樹枯槁す。而して大中・桃原両邑、汲水の処無し。是れに依りて別に門路を開きて其の泉に往来し、以て汲水を為さしめ、普く渇人を済ふ。斯れ佐司笠按司の人に勝るの遠慮なり(流泉下の門、今猶倶に存す)。