[本文0194]【向文英、力を本国に効す。】毛氏家譜に云ふ、日本人秀実、幼少の時より、釈教に追従して僧と為る(沢首座と称す)。成長に及ぶの時、中華に赴くの志有り。一日、琉球の中国に往還するを聞く。正徳年間、特に中山に来り、嘉靖壬午、衣服容貌始めて球俗に従ひ、名を沢と改め、力を本国に効す。遂に毛文英(沢親方盛里)に随ひて中国に入る。帰国の後に及び、題請して故郷に返らんとす。是に於て、王、強ひて之れを留任せしめて姓名並びに妻思戸(此れ日本人なり。何の為に来るやを知らず)を賜ひ、且遂に地宅を那覇に卜して住居せしむ。後、伊呂農辺仁御倉西殿と為り、黄冠を頂戴す。