[本文0442]【宿藍田、身命を顧みずして克く忠心を尽くす。】宿藍田(平田親雲上典通)、憲令を奉じ、進貢使に随ひてメに入り京に赴く。時に清流にて、舟、七里灘を経過するのとき、忽ち渓水氾濫し江水急流するに遭ふ。都通官の船、石を衝きて破損しv上の人員甚だ慌忙を致す。諸船将に其の船を救はんとするも、灘水甚だ急にして力の施すべき無し。藍田、身命を棄去し、衣を脱ぎ水に入りて他の船に至り、即ち他の船の人員とqに貢物並びに白銀等を撈り、他の石上に放在す。本船は即ち湮没を致し、貨物も亦多く失散す。又宿遷県猫児村に至り舟を繋ぎて一宿す。時に、一筏の其の地に繋留する有り。半夜に至り、筏上の人、忽然として聚会し、皆干戈を執り尽く剣刃を帯び、将に以て球人を賊害し、方物を劫奪せんとす。幸に江辺に一草舎を構ふるを看る。想へらく、其の舎を火焼すれば居人必ず来りて火を救ひ、賊自ら遁れ去らんと。藍田、水を泅ぎて上岸し、其の舎を焼燼す。邑人之れを看、尽く来りて火を救ふ。是れに由りて夜賊逃去し、船も亦恙無し。天、暁曙に至り開船して北行す。已に東昌府の江閘に至り、官船に撞着し、河を争ひて相闘ふ。即ち船、閘下に流れ岸を衝きて殆んど危し。船上の人皆箭矢を懼れ、敢へて救を行はず。藍田、身命を顧みず、帽冠箭を受くるも、上岸して舟を繋ぐ。而して争闘未だ弭まず。大夫蔡国器、高く表章を捧げて船頭に站つ。官船、此の表文を看て争闘已に止み、平安に京に赴く。