[本文0457]【附王、神託に因り大難を免れ、城外に幸する毎に、必ず園比屋武嶽を拝して行く。】遺老伝に説く、前代の世、一権臣有りて王上を請待す。時に鳳輦已に駕し、已に園比屋武嶽に過るや、忽ち一老翁有り、出でて聖駕を迎へて曰く、某は心謀叛を抱き、巧みて王の躬を害せんと欲し、以て請待を為す。伏して乞ふ、叡慮して防備慎密にし、以て他の家に幸せよ。欽めよや戒しめよやと。語畢り忽ち清風に化して去る。王、大いに之れを驚怪し、且深く之れに称謝す。既にして兵器を防備し、大いに士臣を戒へ、以て他の家に幸す。他の家、果して勇士を招集する有り、之れを内に蔵し、以て王をエにし位を纂はんとす。然れども某、王の防戒已に密なるを看、手を動かして乱を為すこと能はず。而して王、此の神の託言に因り其の大難を免かる。此れよりの後、王、城外に幸する毎に、必ず園比屋武嶽を拝して各処に行くと。