[本文0516]【蔡鐸の妻葉氏真呉勢、屡々夫に側室を求むるを勧め、且固く請ひて淵を以て嫡と為す。】唐栄の紫金大夫蔡鐸の妻葉氏真呉勢は、十六歳にして出嫁し、二十歳にして甫めて女子を生み、二十二歳にして再び次女を生む。既にして十有余年、受胎に会はず。葉氏之れを憂へて曰く、人の家は以て嗣無かるべからず。君何ぞ側室を求めざらんやと。鐸曰く、汝、婦道を以て姑に事へ、和順至孝なり。天必ずや汝を眷ん。豈嗣無きの理有らんやと。葉氏曰く、妾は受胎せざること既に十有年にtぶ。豈天を恃みて以て家統を廃せんやと。屡々勧め、屡々強ひて以て側室を求めしむ。側室、男淵を生む。二秋を歴て葉氏も亦男温を生む。葉氏、両児を愛すること恰も珍宝の如し。数歳の時に及び、鐸、温を以て嫡と為さんとす。葉氏曰く、然らず。君久しく嗣無く、宗業を廃すること有るを恐る。妾は志を潔くして許愿し、今幸に淵を生む。淵は側室の生む所と雖も、是れ天賜の嫡子なり。既に両児を得、業を伝へ家を保ちて永く虞無し。則ち一家の大慶なり。請ふ、君、再察せよと。鐸、然諾せず。葉氏固く請ふ。遂に淵を以て嫡と為し、温を以て次と為す。而して一家栄華し、友愛尤も篤し。