[本文0554]【志堅原比屋、死後三絃を看るを求む。】昔、一妓女有り、名づけて志堅原比屋と叫ぶ。南風原郡宮平邑の少年、曾て此の妓を携へ来り、絃を弾き歌を唱ひ、昼夜宴遊す。本邑の照屋偶々其の玩ぶ所の三絃を看、心甚だ之れを求む。比屋推辞して売らず。照屋再三懇求す。比屋、勉強して之れを売る。厥の後比屋倏ち一症に染み、適々此の村に死し、屡次形を現はす。三年に及ぶころ、照屋、一夜路に相通ふ。比屋其の三絃を見るを求む。照屋、比屋を請来してqに其の門に到るに、忽ち清風に化して去る。照屋、其の遺恨有るを恐れ、即ち其の三絃を把り弾きて以て之れを聞かしむ。以後、以て再びは覓看に遇ふの事無し。