[本文0566]【宮平邑の新垣、鬼の為に眩せらる。】南風原郡宮平邑に新垣なる者有り。一日、首里より家に回るのとき、波武加真地を経過す。時に人集まりて酒宴し、妓も亦歌絃するを見る。忽ち一人の手招きする有り。新垣即ち他の為に眩せられ、往きて其の地に至るに、半ば醒め半ば眩む。此の時鬼と一同に宴遊す。已に暁天に至れば、相約して以て毎夜又会するを諾して悉く皆散去す。新垣全く醒めて之れを視るに、独り古墓の傍に在り。而して其の会する所の者は、皆曾て死するの人なり。新垣大いに驚きて回る。此れよりの後毎晩果して鬼来り、高く会を催さんと叫ぶ有り。新垣僧に請ひ神に告げキを設けて以て之れを禳ふの間、新垣倏ち熱症を発し、屎、黄泥の如し。即ち医士に請ひ服薬調治す。数日を歴閲して其の屎出で尽くし、症即ち全く癒ゆ。