[本文0644]【古知屋邑の名嘉真、異蕃薯を各処に流布す。】金武郡古知屋邑の名嘉真、一日、浜に往きて潮を汲むに、忽ち一蕃薯の、葉已に裂開し、色紅にして常と異なるを見る。名嘉真、深く之れを奇疑し、即ち此の薯を帯び、之れを宅地に植うるに、葉自ら茂盛し、結実顆多なり。熟時最も早く、地の肥瘠を択ばず、亦能く風寒に耐凌して、常の蕃薯に絶勝す。人皆来りて其の種を求め、以て栽植を為す。之れを名づけて古知屋芋と曰ふ。辛亥の年に至り、恭しく褒美を蒙り、直ちに黄冠に陞る。