[本文0853]【始めて貢船の直庫、褒美して以て勧むることを定む。】進貢の船隻は、大海を往還するに、専ら作事・船頭に依りて、以て平安を得。則ち船頭・作事は緊要に係る。然れども水程熟諳の者、今に至りて甚だ少し。是れに由りて、摂政・法司等僉議し、水梢・作事は、船頭を情願して以て前程と為す。而して、今、楮基(瀬名波親雲上軌里)は、始めて水梢に擢で、直庫を歴履して、航海すること数十次、始より終に至るまで、平安にして老を告げ、以て天年を終ふ。随ひて楮基を将て、新参の家譜を給与し、以て仕籍に登す。此れより以来、百姓、航海往来して、功を積むもの甚だ多し。即ち此の例に照し、新参の士、功を船に積む者有れば、譜代の家に登せ、以て褒奨を為す。則ち水梢は作事に擢んづることを要し、作事は船頭に陞せんことを要し、船頭は仕籍に登せんことを要すれば、必ずや皆克く心力を竭して、自ら功勲を積むこと有らん等の因、茲に朝議して、恭しく疏文を具し、以て聖聴に備ふ。