[本文1017]【平安座島に母子有り。共に海水に溺れ、母死し其の女死せざるなり。】与那城間切平安座島は、只汀路一条有り。潮退く時を待ちて、以て徒渉すべし。本島の童女、名を嘉真と叫ぶ。年甫めて七歳なり。一日母に随ひて徒渉し、既に稲把を得て帰島す。ユに風雨に遭ひ、半ば渉りて路を失ふ。海潮又漲り、其の母W死す。其の女嘉真、偶々稲把に附きて浜村に漂到して活く。或ひと之れに問ふに、答へて曰く、何人なるかを知らず、現に水中に在りて、我が手を携へ起し同に沙涯に到り、忽然として見えずと。