[本文1113]【佐敷間切新里村の宮城夫婦、各々忠を家主に尽す。】佐敷間切新里村に一夫婦有り。婦の名は戸等と叫ぶ。是れ一寡婦の奴に係る。夫の名は宮城と叫ぶ。幼時父に売られて僕と為り、年長じ、心を尽して主に事ふ。主人之れを嘉し、婚を戸等に求めて、以て之れが妻と為す。其の夫婦、日は則ち各々主の事を理め、夜は則ち共に私田を耕す。未だ十年ならざるの間、得る所のものは、以て身を贖ふに足る。家主も亦其の忠を嘉し、身価を免ぜんと欲するも、只貧に迫りて其の半を収む。妻も亦善く寡主に事ヘ、竟に夫婦、其の養老の托を受く。乃ち失母と併せて三親と為して之れを養ふ。