[本文1123]【仲城間切喜舎場村の寡婦思戸、力を竭して家道を再興す。】喜舎場村に一寡婦有り、名を思戸と曰ふ。二十六歳の時、其の夫安里掟親雲上、病久しくして亡す。未だ幾くならずして、舅、病に染み、力を竭して病を養ふも、亦久しくして亡す。此の禍に連遭して、家財を耗費し、既に私田を典す。又米一十二石を借り、勢奈んともすべき無きに似たり。但、思戸、日夜布を織り、兼ねて耕種を為し、動労するこ々多年、未だ嘗て些しも怠らず、以て債を償ひ、田を贖ひ、家道を再興す。男子を長成し、之れをして算を学び字を学び、東宮に供役せしむ。