[本文1129]【慶良間島の孝女宇戸、家貧にして、力めて盲父を養ふ。】慶良間島に一女有り。名を宇戸と叫ぶ。天性甚だ孝。二男有り。倶に多病、極めて貧にして父を着ふ能はず。唯宇戸、力を尽して之れを養ふ。或いは樹菓を採り、或いは百合を採り、或いは海螺を拾ひ、或いは田螺を拾ひて、其の食を奉補す。如し遠く木の実を採りて回ること遅ければ、則ち父の餓ゑんことを恐れ、必ず行中に在りて殻を去り、実を取りて之れを進む。況んや父の衰老甚だしく、天寒を怕れ、目盲して自ら動くこと能はざるをや。此れに因りて出づれば則ち隣人に托して以て之れを扶く。冬は則ち薪柴を採りて之れを煖め、饑寒せざらしむ。父の死後、嫁して一女を生み、以て古波蔵に妻はす。其の夫婦も亦孝にして家富む。宇戸、其の孝養を受け、安楽にして卒す。