[本文1153]【三十四年、当間邑宮城筑登之を奬して特に黄冠位併びに物件を賜ふ。】小禄郡当間邑に宮城筑登之なる者有り。生質朴実にして、義を見るに果敢なり。其の父母衰老し、家産を長男上原に伝ふ。不幸にして上原病に染み、日久しくして死す。其の療費甚だ多く債を成し、計の施すべき無し。宮城次兄に謀りて曰く、事を謀りて若し早く決せざれば、必ずや家を敗らん。家に田地有るは、父の、力を労して得る所なり。一妹有るは、母の、他人の女を乞ひて以て女と為して育つる所なり、其れ義に于て売るべけんや。田の若き、妹の若き、之れを売りて債を償はば、則ち父母の心を痛ましめむ。其れ忍ぶべけんや。願はくは弟が身を売りて債を償ひ、以て家を全うし、親を安んぜんと。乃ち是に父母の命を請ひ、身を売りて人の奴と為る。日には家主に事へ夜は私業に力めて励勤怠らず。竟に自ら以て身を贖ふことを得。父母悦喜勝へず。又能く父母に孝養し、必ず以て其の心を安んじて孝を為し、其れをして安楽にして天年を終へしむ。又次兄の老ゆるに至り、身体衰弱して多く欠債を致し、其の病に染むに及び、宮城多く療費を資し、心を尽して調養す。愈えずして死するも亦兄に代りて債を償ひ、即ち嫂を家中に迎へ移して之れを養ふ。又岳母に至りては、不幸にして早く其の夫及び男子の病故に遭ひ、只一女有りて尚幼く、更に家資空乏して人の頼るべき無し。亦皆移し来り、同居して養育す。又親戚・村人と相和睦し、更に稼穡に老い、其の道を以て村人に勧む。之れに兼ぬるに多く松樹・蘇鉄を閑地(即ち山野の類)に植ゑ、以て闔邑の補助と為す。王上、其の行と事とを嘉し、黄冠の位并びに白綿布三端・紋中布三端を恩賜す。