[本文1159]【宮古島船中華に飄至し、既に国名を揚げて国に回る。王上、英俊氏・白川氏等を奨賜するに爵位を以てす。】宮古島英俊氏(伊良部首里大屋子)・白川氏(洲鎌目指)等二人、来りて年貢を納め、既にして回るの時、颶に遭ひ飃流日久し。船上水少くして危し。遂に一高山下に到る。水梢人等岸に登りて水を取るに、只見る、異貌の山人一夥、各々刀鎗を持ちて殺来するを。其の勢凶悪なり。水梢驚き走りて船に回る。計の水を得べき無し。正に愁ふるの間、忽ち馬艦船一隻の駛せ来る有り。礁に沖し、十分危難なり。大屋子等、皆錯りて以て本島の船と為して、救はんと欲し、早く杉板を撥し、敢へて往きて之れを見るに、乃ち中国の船なり。険を怕れて空しく回る。彼の難船の一人、其の杉板に坐して飛来して急を告ぐ。奈んせん其の語通ぜず、只涙面以て其の情を通ずるを見るのみ。水少きを愁ふと雖も、他人の溺死するを坐視するに忍びず、乃ち険を冒して、敢へて往きて之れを救はしむ。時を移さず其の船破壊して沈む。大屋子の船、泊して山下に在ること十余日、順風有るを見て、帆を揚げて放洋す。次日台湾府轄下金包里に飄到し亦沖破す。幸に官救を蒙り、台湾府に送到し、転送してメに到り、館驛に安插す。英俊氏等二人、皇上の特恩を蒙り、毎人各々扣藍布四疋・棉花四z・好茶乙z・麦粉乙zを給し、又通船人等に酒二甕・豚二口・羊二口・扣藍布四端・棉花四z・武異茶乙z・麦粉乙zを賞給するを蒙る。而して後、公事有るに困り、各衙門に赴くに、各衙員名、誰か球国命を救ふ仁厚の俗を称賛せざらむや。此れに因りて、各官本国飄風人等を体恤すること、前年に異なりて厚し。是を以て、王上之れを聞し、爵位を奨賜す(大屋子は勢頭位を拝し、目差は筑登之位を拝す)。