[本文1176]【夏四月二十八日、雷、馬承基国頭按司正方の房屋柱壁を損す。】此の日辰牌時分、忽ち一声の雷響を聴得する有り。料らずも、国頭後殿簷外、赤黄の光輝其の茶房より其の次座に入り、転じて庫理を過ぎて熄む。此の時坐する所の家女、驚き且悚る。而も家人皆恙無し。此れより其の綜跡を尋ぬるに、後庭大屋の簷外九尺許りに落ち、潦に赤色を浮ぶ有り。又其の傍辺を見るに、煙立ち膩流れて、恰も硫セの臭の如く鼻中に侵入す。意はざるなり、殿中より往来輪環し、遂に柱壁を破りて回去せむとは。