[本文1319]【九月十九日渡名喜島又吉の善行を褒奨す。】渡名喜島嘉真又吉の父、又吉筑登之親雲上は、年五十三にして盲目と為る。嘉真又吉夫妻能く孝養を尽くす。今父又吉、年已に八十四歳に及ぶも、身体康健、心常に安穏なり。嘉真又吉、六男三女を生下するも、皆孝行を視習ひて、家風和宜なり。且従弟武太又吉、幼穉の時、双親に背かれ、家業も将に傾亡に至らんとす。嘉真又吉、資を捐して助済し、凡そ教ふる所の者、自家に異なる無し。故に其の家業、漸く饒かなり。今に及びて、父母を祭るの礼も裕かに挙行を為す。又往年、特に糸満村に到り、Qを釣るの法を受け肄ひて、之れを島人に教ふ。是を以て島中、Qを捕ふる者多く、各々其の油の価銭を以て、賦税の資に塾補す。又姻台の辺は、原、用水無く、以て不便を致す。嘉真又吉、見を起し、姻台下に泉水を掘り得たり。唯に用水の便のみならず、亦田圃に利す。挙島の老幼、其の行ふ所を見、皆心感を致す。又、升取役と為り、勤職多年、今に及びて年紀已に老ゆ。此れに因りて、掌管各役、由を備へて詳明す。故に階越して、筑登之座敷を賞賜す。