[本文1386]【本年、兼城郡糸満村の上原筑登之等の人命を拯救するを嘉奨し、各級の位を頒賜す。】座間味郡の商民六人、嘗て貨殖の為に、四端帆船に坐駕し、那覇を望みて来る。方に神山(俗に慶島と呼ぶ)洋面を過ぐるや、ユ然、風洌しく波暴し、船隻覆沈す。其の内三人は帆檣に扶し、浪に随ひて漂流し、竟に溺死を致す。三人は游泳して生を求む。奈何んせん瀾強く力困まり、勢必ず沈没せんとす。幸に兼城郡糸満村の上原筑登之・金城仁屋・大城仁屋等十人有り。偶々神山に在り、乍ち其の危きを見るや、即便に独木舟二隻に駕し、飛去して援得し、本山に回来して、力を用ひて調治し、那覇に送り来る。此れに因りて、難商三人及び管轄人役等、具さに其の由を告ぐ。夫れ上原は、辛巳・乙未両歳、馬齒山両郡の人有りて破船の時に、金城は、辛巳・癸卯両歳、座間味郡・久志郡の人有りて、破船の時に、大城は、壬午・癸卯両歳、渡嘉敷郡・久志郡の人有りて、破船の時に、各々再び溺を援くること共計三人、淹を拯ふこと三次なり。仍つて、上原を嘉して黄八巻の位を賜ひ、金城・大城を嘉して、筑登之位を賜ふ。