[本文1389]【十一月二十二日、大宜味郡塩屋村の前の山川親雲上等の功労を褒賞す。】大宜味郡有る所の猪垣は、大風雨の時、多く損壊する有り。其の修葺に至りては、稼穡の時を論ぜず、各村分派し、屡次巡修す。是を以て、毎年多く人力を費す。塩屋村前の山川親雲上、前の前田親雲上、前の山川親雲上・屋古前田村前の前田親雲上・塩屋村宮城筑登之、金城筑登之、山城筑登之・田湊村金城筑登之・渡野喜屋村大城筑登之・根路銘村大城筑登之等、相会して商議し、各々百姓に勧めて、公務・農事を妨げざるの時、及び月夜に当りて、石頭を持ち集む。塩屋・屋古前田・田湊・渡野喜屋・根路銘等五村の民夫を発動し、石を以て猪垣を改築すること長さ二千六百三十一歩・高さ七尺より四尺に至る。上届申年工を興し、寅年に至りて全く成る。若し夫れ猪垣、堅固有ること無くんば、則ち農事の妨げ、此れより大なるは莫し。是を以て、往々両年に一遭、大概樹木六万余株、民夫七千八百九十余名を将て、其の垣を改修す。是れ意外の費に係る。各々皆前の如く、心を留め慮を発し、固く石垣を築く。故に民夫・樹木の費無く、永く郡中の便利と為る。此れに依りて、各頭目及び掌管役等、由を備へて朝廷に報明す。随ひて各々褒賞を賜ふ。