[本文1403]【本年、兼城郡糸満村の玉城筑登之等の、屡々人命を救ふを褒奨し、各級の位を頒賜す。】兼城郡糸満村の玉城筑登之・大城筑登之・上原仁屋・大城仁屋・金城仁屋・大城仁屋・牛金城・松上原等八人は、魚を捕へて業と為す。嘗て己酉年に于て、那覇・泊曁び名護郡等の処の商民七人有り。同に一船に駕し、薪木を装載して宇茂佐村開船し放洋す。前みて泊村に赴かんとし、方に読谷山美崎を過ぐるや、料らずも風猛に瀾驚し、正に危険に在り。即便に物件を白「し、力を尽くして燒hするも、終に是れ損壊す。七人帆檣に扶りて一昼夜の間、波に任せ漂蕩し、竟に神山(俗に慶島と呼ぶ)に到り、匍匐して上岸す。奈んせん各々湿衣一領を穿ち、寒冷饑渇に勝へず。已に四日を歴て、気息菴菴として人命危浅なり。幸に是の日酉刻に于て、彼の玉城等、独木舟三隻に駕して、捕魚して前み来る。忽ち其の形を見て、即ち水食等の項を給し、心を尽くして調養して、翌日泊港に送り来る。故に其の七人、性命を全うするを得たり。又彼の玉城等、昔、沖永良部島・慶良間島・久志郡・国頭郡・大宜味郡等の船損壊の時、亦已に救済すること有り。共計人を救ふこと三次なり。是れに由りて、玉城筑登之・大城筑登之を嘉して、黄八巻位を賜ひ、上原仁屋・大城仁屋・金城仁屋・大城仁屋を嘉して、筑登之位・を賜ひ、牛金城・松上原を嘉して、赤八巻位を賜ふ。