[本文1409]【四月初六日、久米島に暴風大いに起り、以て人家を敗る。】是の日、久米具志川郡、晨より大雨、殷雷並び起る。其の夜亥刻に至り、雨小に且静かなるに、暴風驟かに起り、西銘村夫地頭仲村渠親雲上四間角の貫家一軒を以て、後面に吹き離すこと約二尺有りて、壊破已に甚だし。又其の廂に置く所の板驤皷ヒも亦二番座の天井に吹き去る。又其の一男、将に小座に到らんとして、庭中に吹き送られて、約三間の遠きに有り。然れども傷を受くること甚だしくは重からず。又二間角の台所有り、其の家を隔離すること二尺に過ぎず。此れ乃ち安然にして、毫も破る所無し。是れ甚だ奇怪に非ずや。又各役及び百姓の家十余四軒、倉廩一軒有り。其の内十軒は、之れが吹き倒す所と為り、極めて忠に及ぶ。其の四軒並びに倉廩一軒に至りては、敗を受くること已に少く、即ち修葺を加へて居住す。伊の遭難人数の内、二人は痛を受くること稍軽く、故に速かに愈ゆるを得たり。三名は、正に座中に在りて、風の後壁に放つ所と為る。然れども身を傷つくること無し。又盃台蔵する箱を以て、百余間の外に吹き飛ばす。又水ウを二間の外に吹き放ち、以て損壊を致す。此れ皆非常の事なり。