[本文1416]【八重山島平久保村の耕作筆者野国の善行を褒賞す。】八重山島平久保村は民疲れ財乏し。前年以来、使者并びに指揮人等を設立し、其れをして教令せしむ。惟、野国有り、克く心力を尽くして、村民を励勧し、多く地土を墾して播種稼穡す。去冬より起して、食需漸く続き、今春に至りて、村中日食饒足せり。猪垣無きの場に至りては、石墻を築起して、以て稼穡を為す。且多く蘇鉄を植ゑ、以て凶歳の用に備ふ。且有る所の井水、水力強からず。旱時には遠く汲み、徒らに工力を費す。野国、井を村辺に掘り、永く利益を貽す。又本村は是れ諸船会集の津に係る。且遠目番所有りて、公務冗繁なり。而して馬匹居ること少く、以て遅誤を致す。野国、飼ふ所の馬一疋を将て給付して公を弁ず。又野国略々医術を悟る。村人染病の時に遇へば、薬餌并びに焼酒等の件を発し与へて、以て療治を為す。男女共計二十九人、以て痊愈せしむ。野国毎事、心を留めて料理す。乞ふ、褒奨を腸へと。在番・頭目具詳して朝廷に禀明す。随ひて即ちに白木綿布二端を賞賜す。