[本文1428]【渡嘉敷郡地頭代小嶺親雲上の功労を褒賞す。】上届己卯年、太平山地船、慶良間島宇良泊洋面に在りて停泊の時、風暴し浪猛に、錠二頭を加投す。而して其の一頭は、風波の為に切断せられ、甚だ驚駭を為す。其の本船を以て港内に駕入せんと欲し、力を尽くし心を竭すと難も、奈んせん津口に熟する者無く、慌忙の際、幸に小嶺、鹿を狩りて外に在る有り。其の慌相を見て、即刻人丁を引率して小舟に駕し、彼の処に漕ぎ到りて、意慮を殫して、港内に弔入し、以て危難を免るるを得しむ。且前年、疱瘡流行するや、小嶺能く療治の法を悟り、行きて阿波連・渡嘉敷両村に到り、能く調治を教ふ。況んや又此の時、稼穡淑からず、日食敷かざる者有り。小嶺、米七斗七升を発して、以て救賑を致すをや。故に疱瘡全く愈え、死亡する者無し。且本島は平日、頗る蘇鉄を以て食に充つ。屡々其の毒に害せらるる者有り。小嶺嘗て既に之れが調治を為して、其の貧乏なる者に遇へば、薬資を収めず。通島多く利益を得たり。是れに由りて、各村頭目禀称し、掟・酋長・在番・惣地頭印結を加具して、朝廷に禀明し、賞して勢頭座敷位に陞す。