[本文1431]【八重山島真世友盛の妻の善行を褒賞す。】八重山島鳩間村伊世屋西盛の母波伊津は、本村真世友利に嫁して妻と為り、一男七女を生下す。上届己丑の年に、其の夫友利、身故す。此の時、彼の男、年方に二歳なり。波伊津、孀居を為すと雖も、能く家業を務む。亡夫の年祭・節祀に値ふ毎に、優に従ひて之れを行ふ。今、彼の女児、皆已に嫁して家有り。又亡夫友利は別に一男を生む有りて生母の養ふ所と為る。十二歳の時、其の生母已に死す。即ち波伊津の家に移して、己の子と一同に養育し、毫も親疎無し。意らずも、己の所出の男児夭殤す。彼の別に産む所の児子をして、其の家督を継がしめ、其の稼穡を授く。此れより逐年家資漸く裕にして、諸般の貢賦納清す。又村中貧乏にして、貢賦を挽欠する者有れば、波伊津、米三石三斗三升六合五勺を発借して、以て輸納せしむ。且身を守るに節を以てし、年六十余九に登る。親族より以て村人に至るまで、相交はりて和睦なり。褒奨を賜ふを祈る。在番・酋長・朝廷に禀明し、随即に奨して、筑登之妻の品銜に陞せ、並びに白木綿布二端を賜ふ。