[本文1451]【八重山与那国村の宇江城、米・芋を餓者に与へて以て人命を済ふの善行を褒賞す。】八重山与那国村の宇江城は、励精農を勤め、家資頗る富み、年貢欠くこと無し。村人と交るに和睦を以てす。且去年飢饉僅の時、村中日食敷かずして飢に及ぶ者有り。宇江城惻隠の心を発し、米二石五斗及び三千二百坪圃の蕃薯を送与す。此れに因りて、各々性命を保つ。又与那国村は、稼穡の地、用水有ること無し。農夫は遠くに汲みて日を費す。宇江城気を留め、自己の質を捐して、近く便場を択びて、以て五井を掘る。村中永く利益を得たり。又已に八年を歴るの酉に于て、芭蕉園九百坪を設け作り、以て村中に与ふるに、年増しに茂繁す。村人此れを採りて、船具に塾弁し、衣服を製作す。該宇江城、屡々村の為に殊功を建て、且、原、勤功有り。請ふ、分宜の賞を准せと。在番・頭目具報す。此れに因りて其の功労を賞し、赤八巻位に陞す。