[本文1497]【本年九月二十七日、八重山島惣横目盛山与人の善行を嘉奨し、以て越級して座敷位を賜ふ。】八重山島は、上届三十二卯年、海水騰湧し、人民溺死するもの甚だ多く、俄に葬すること能はず。惟其の死骨、各処の村外に散埋す。故に其の子孫、何れの方位に向ふや、焼香を行ひ難し。更に孝情に於ても、亦疎略に属す。宜しく時節を度りて墓墳を築造し、其の骨を一所の処に埋葬すべしと、曾て已に議して約す。奈んせん其れ以来、災殃踵を接して、損失荐りに臻り、多く公物を逋れ、正に困憊に坐し、墓を築くこと能はず、空しく遅延を致す。幸に該与人、之れが為に気を留め、去年十二月工を起して墓を築き、二千九百二十余人の枯骨を以て一所に埋葬す。又駐任の僧の弔祭を請ひ、其の族戚をして焼香せしめ、既にして細に縁記碑文に陳ぶ。時に厥の後より、節・祭を愆ること無し。特に其の子孫、孝情を遂ぐるを得るのみならず、島中に至りても亦願望を遂ぐ。褒賞を賜ふを請ふ等の由、在番・頭目具呈して前み来り、級を越えて座敷位を賜ふ。