[本文1498]【本日、八重山島盛山村波照間仁也の孝仁の行を褒賞し、以て越級して黄冠を賜ふ。】八重山島盛山村の波照間仁也は、常に七十余歳の父母に事へて、孝養怠らず。亦親族縁家と交はるに既に和睦を以てす。但に此れのみならず。力を農務に尽くし、毎年諸貢を奉納するの外、十斛余零を過納す。且同村百姓三人、棲むべきの戸無く、亦告ぐべきの人莫し。甚だ怜むべきに属す。管役及び村人等托養せしむ。該間、厚く恵み、膽養すること子の如し。衣食を給与し、其の貢賦に至りても亦既に賠納す。今両人をして妻を求めて戸を開くを得しむ。其の一人をして妻を求むるを待ちて、以て戸を立てしめんとす。且去年、唐苧出産甚だ少く、調出物・御用布を織るの妨を致す。幸に該間、蔵する所の唐苧十斤六合三勺、其の価米七斗八合六勺六才起を将て、不足の人等に譲与す。又本村は従前、w車を設くる無し。他村に借貸して、賃米の費は姑且く論ずる勿く、其の村葬送の時、屡々妨礙を致す。該間、之れが為に気を留め、自ら大米二斛三斗余を捐して、w車を設作し村中に交与す。又前年栽する所の番薯、虫の為めに虐はれ、日食ユに乏しく、百姓正に饑餓に在り。管役、俸米の内より七斛を賑借す。然れども用に敷かず。随ひて管役等該間に告令して、麦五斛七斗五升を発借せしめ、以て陳厄を免れしむ。該間、此くの如く村の為に料理す。褒嘉を賜ふを乞ふ等の情、管役呈請し、在番・頭目隨ひて其の由を具して前み来り、越級して黄冠を頒賜す。