[本文1516]【本年、豊見城郡田頭村の瀬長筑登之等の功労を褒嘉して爵位を頒賜す。】豊見城郡田頭村は、多年疲苦し、百姓、私自の負債・売身人数甚だ多く、遂に人烟減少を致して農業を尽くす能はず。是を以て毎歳食用敷かず、年貢併びに諸雑物等の件、全納すること能はず。年を追ひて借を増し、其の欠銭の数は共計三万八千貫余文、甚だ是れ困窮す。是れに由りて受くる所の砂糖及び諸雑物等、過半他村に配授するも、仍色を起さず、将に倒村の憂有らんとす。幸に是に本村の瀬長筑登之・座安村の宜保筑登之・伊良波村の上原筑登之・高安村の外間筑登之、外間筑登之・田頭村の座安筑登之、上原筑登之、亀運天、松座安、蒲戸比嘉、牛上原等意謂へらく、湿有るの圃及び水頭有るの薄地に在りて新に田畝を墾すれば、則ち以て稼穡の利を増獲すべし等由と。村人と議定し乃ち其の情状を把り、又検者・地頭代の裁を乞ひ、圃籍三千四百六十余坪を、上届辰年より起して酉年に至るまで、新に田畝を墾きて以て稲を植うるを為す。刈る所の米穀は乃ち当日租す所の米数に比して、十二斛三斗余を増出し、其の零利を以て而ち搖会の計を為す。且有る所の田畝に至りても多く薄地に属し、其の苗を敷くの田は、多く他村の田に租す。故に其の租又重く、甚だ利便ならず。是に于て村人に相勧め、改めて村落東辺に有る所の寒水川を掘る。而して其の村前より流れて西原に至るまで水道を掘疏す。故に里汁流入す。且名嘉地村に有る所の井尻併びに其の村汁は、溝を掘り、新堀田並びに薄地田に引き入れ、遂に上田と為し、苗を敷くの田を他村に租せず。前年等の旱に逢ふと雖も、然も水蓄留して乾かず、遍く稲苗を植ゑて不足と為さず、各利便と為ること小ならず。其の搖会に至りても、亦取領を行ひ、上年二月、其の私の負債及び売身人も皆償還を為す。曾て他村に授くる砂糖併びに雑物等も、上年三月より旧に仍りて担ひ弁ず。且去年に至り、本村比嘉筑登之親雲上所有の瀉八百坪許り、手及ばざるに因り、耕耘尽くさずして以て原来の荒瀉と為る。若し村中より修葺し併びに耕耘を致さば、則ち去年より七年に至るまで獲る所の農作は村中に配与せん等の由、已に通村百姓と議定を致し、田陌を修葺し土を入れて田を作り、去年より起して始めて稲を植うる有り。且赤崎森に于ても、定数を除くの外、蘇鉄二千二百株を増植し、永く村中の利と為る等の由、該等具呈し、酋長・検者・両惣地頭・田地奉行等印結を粘添し、以て朝廷に禀す。随ひて各々位を賞賜す。