[本文1567]【本年、摩文仁郡に下知役を設立するを准す。】摩文仁郡は、曾て苦疲するに縁り、経に下知役を設くるを蒙り、其の督理の善しきに因り、遂に逋るる所の貢賦倶に已に完納す。是れに由りて上届辰年、両惣地頭禀請して下知役を罷退す。茲に査するに、曾て私自の負債曁び身を鬻ぐの人数、尚未だ償贖せざる者多からずと為さず。茲に因りて、身を贖ひ債を償ふの術、経に百般議し謀ると雖も、然も該郡は瘠地にして石多きの海辺、以て荒に属し、諸凡の東作傷を受くること小ならず。且前年、田の稲、虫を生じて産米幾ばくも莫く、貢賦を歉納するの時に至り、゚意も痲疹流行して以て冗費を致す。是を以て売身人数、前に較べて愈々多く、而も又波平・石原・小渡の三个村、人口減少し、将に覆村に及ばんとして、土地を伝授する能はず。他村に分授するを請ふの一款、屡々経に具呈して前み来るも、奈んせん他村に在りても亦疲れること一律に係り、呈するが如くは授け難し。今已に此くの如くなれば、則ち検者一人の力を把りては教示施し難く、勢、窮益々窮を添ふるを見ん。乞ふ、今番下知役を設立するを准せ等の由、両惣地頭詳明す。随即准す。