[本文1713]【本年、八重山島川平村の田多仁屋の善行を褒嘉して爵位を頒賜す。】田多の人と為りや、上は則ち年貢を完うして逋れず、下は則ち村人と交はるに和を以てす。且上届申年以来、貢賦を欠する者有りて、田多、米穀を発与するもの共に五石五斗。又川平村に、岸原より宇知也那崎の海涯に至るまで山猪を防ぐの垣有り、長さ四百八十五尋・高さ五尺。昔に在りて、垣を築くに石を以てす。其の後漸く壊れ、毎年多く夫役を費し、木を用つて柵を修し、以て山猪を防ぐも、尚稼穡を侵喰する有り。民、食継がず。去年四月に於て、村民旧式に依循し、石を築きて垣を為る。是の時、田多、大米四石一斗五升を発給して勧励す。即ち村民等、気力を振ひ起し、速に築き竣るを得たり。時に厥の後より猪の垣中に侵入すること無く、永く益を村に貽す。是れに由りて筑登之位を賞賜して以て其の行を表す。