[本文1730]【本年、八重山の所属与那国島の登野城仁屋の善行を褒嘉して以て爵位を賜ふ。】登野城の人と為りや、家を治むるに善を以てし、人と交はるに和を以てす。又島の為に利を図り、麦種一石五斗を本山に寄買し、島民に分ち給して広く播種を行はしむ。其の島、麦を種うること此れより始まる。又地畝を開墾するの時に、神酒六壜・焼酒四十八沸を給発して以て力役を労ふ。又粟種を欠く者に、粟種一石を分ち給し、之れをして播種の時を失はざらしむ。又該島有る所の冶器、久しきを経て損破し、其の用に堪へず。該登野城、新鉄五十斤を送給して以て改造を行はしむ。又該島、原、喪事無く、人を葬むるに逢ふ毎に、竹を以て之れを造り、甚だ見るに雅ならず。該登野城、自ら家資を捐して喪車併びに明器を設造し、以て島人に給す。時に厥の後より、葬礼具備し、燦然として見るべし。是れに由りて、該島在番・頭目等、褒賞を酌賜するを呈請し、法司王に奏して、筑登之座敷位を賜ひて以て其の行を表す。