[本文1777]【本年十二月初六日、久高島加葉江良嶽に神の顕現する有り。是の日午刻、久高島神婆七名、家庭を出でて公方嶽に入る。酉刻に至り、尸女二名・神婆二十名も亦該嶽に入り、終夜放食神遊す。翌七日黎明に至り、闔島の老幼男女相聚り、冠位有る者は各衣冠を整へ、倶に該嶽の前に在りて一斉に四拝の礼を行ふ。此の時神婆、獄を出づるに、忽ち獄中金を打つの声有るを聞く。神婆、神諭を伝へて曰く、霊神将に顕はれんとす。爾等均しく加葉江良嶽に到りて神顏を瞻仰せよと。遵ひて該嶽前隔離すること百八十歩許りに到りて、神の顕はるるを伺候す。午刻に至り、該嶽の門口より隔遠すること二十歩許りに、神一位の杖を持ちて顕現する有り。其の容貌を看るに、高さ六・七尺許り、黄金の冠を戴き、黄糸衣を穿ち、赤帯子を束し、青馬qを穿つ等の模様有り。又、神一位の青衣裳を穿ち、大江涼傘を持ちて従ひ出づる有り。身体は高さ一丈許り、涼傘は長さ二丈許りなり。尸女・神婆、即ち神顏に向ひて四拝の礼を行ふ。訖りて、神、獄中に入りて見えず。挙島人民僉卜して云ふ、此れ則ち日後豊歳の兆ならんと。歓喜極まり無し。該島の検者、即ち其の由を備へ、朝廷に禀明す。】